『木の匂いと忘れ去られる道具と技術』★建築通信★
建築通信
自分のルーツをたどると大工家系です。特に父方は、色々な職人さんが住み込み、寝食を共にしながら働いていたようです。修行中の若い職人さん達は、威勢がよく、酒をのみ、喧嘩早く、毎日がお祭りのようだったと父が話していました。
叔父の工務店、(大澤家での)通称「工場(こうば)」に、幼少の頃から父に連れられて遊びに行っていました。「工場」へ行くと、機械や、大工道具を見るだけで楽しくなり、端材を使って色々な物を作っていました。仕上げ材を使ってしまった時、職人さんの道具を跨いだ時などは本気で怒られました記憶があります。
先日、叔父へ線香を上げに行くと従兄が「工場」の片付けをしていました。ふと見ると、以前使用していた「墨壺」、その近くに竹の「墨差し」、錆びた機械達。
木材を選び出し、真剣な顔で回転させ、差し金、 尺杖などを使い、何尺何寸とか言いながら、解読不明な記号やひらがなを書く人。機械でホゾを作る人、鋸を引いている人、鑿を叩いている人、鉋をにらんでいる人。活気に溢れていた「工場」の雰囲気。威勢の良かった叔父、何人もの職人、何故か手伝っていた父、掃き掃除をしていた小僧(従兄)。大量のおがくず、透けるような鉋屑、木の匂いの中で遊んでいた当時の「工場」を思い出していました。
40年近く経つと「工場」の雰囲気、道具、材料も変わりました。
釘の箱が消え、並べてあった木材からは無垢材が消え、おがくず、鉋屑が少なくなり。
CADの進化、プレカットの発展・普及により、ほとんどの木造建築がプレカット材で施工されている現在。建物の安定した品質と予定通りの工期の実現をしやすくなっている反面、昔から自然の木を使って家を建ててきた大工の経験、技術の継承が失われているのが現状です。
「墨付けして手刻みできる大工が少なくなり、造作して造り上げる和室が無くなっていくなぁ」と、従兄が一言。
もの造り好きの原点を思い出させてくれる「工場(こうば)」、いつまでも残ってもらいたい好きな場所で、木造建築のこれから、伝統のつまった日本建築のこれから、自分自身のこれから。使われていない道具を片手に考えていました。
❖❖❖ 設計技術部 大澤 ❖❖❖
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